先に結論を3行で。
- 音声入力を「AIに渡す材料を作る道具」と考えると、使い方がまるで変わります。認識の精度が100点でなくてよくなるからです。
- 実際、お客様訪問の帰りに車へ乗り込む前の3分だけ話しておくと、家に着く頃には議事録もタスク登録も精算の下ごしらえも終わっています。
- ただしAIにも直せないものが2つあります。固有名詞と数字です。ここだけは仕組みで押さえないと、あとで痛い目に遭います。
「音声入力は誤変換が多いから使えない」で止まっている方が多いのですが、渡す相手がAIなら話が変わります。当社(合同会社ヒバナ)で実際にやっていることを、そのまま書きます。確認日:2026年8月17日。
実例:お客様訪問の帰り、車に乗る前の3分
打ち合わせが終わって、駐車場に戻ったところです。エンジンをかける前に、スマートフォンかノートパソコンに向かって、思い出すまま話します。
「今日◯◯さんのところへ行ってきた。話したのは新しい見積の件と、来月の納期の相談。先方は今の仕様で進めたいとのことで、こちらは金曜までに図面を送ることになった。あと、駐車場代が600円かかっている。次の打ち合わせは再来週あたりで調整」
整った文章にする必要はありません。順番も前後して構いません。思い出した順でいいので、抜けが無いように喋るのが大事です。
これをAIの道具に渡しておくと、家に着く頃には次が出来上がっています。
| 出来上がるもの | 中身 |
|---|---|
| 議事録 | 日付・相手・話した内容・決まったこと・次にやること、の形に整理される |
| 顧客の記録 | その会社のノートに、今日のやり取りが追記される |
| タスク | 「金曜までに図面を送る」がカレンダーに登録される |
| 精算の下ごしらえ | 駐車場代600円が、経費の一覧に入る |
移動時間が、そのまま事務作業の時間になります。家に帰ってからパソコンを開いて思い出しながら書く、という時間が丸ごと消えます。
なぜ精度が100点でなくていいのか
ここが本題です。
音声入力は必ず誤変換します。「出張精算」が「出張生産」に、「音声入力」が「温泉入力」に、「Claude Code」が「クロード行動」になったりします。人に読ませる文章なら、これは致命的です。
ところがAIに渡すなら、ほとんど問題になりません。前後の話の流れから、AIが正しく読み取るからです。「出張生産が終わっている」と書いてあっても、経費と移動の話をしていれば「精算のことだな」と分かります。
この記事の企画も、実際にそうやって届きました。依頼の文章には「出張生産」「温泉入力」「クロード行動」がそのまま入っていましたが、やりたいことは完全に伝わりました。
つまり——
| 渡す相手 | 求められる精度 |
|---|---|
| 人(メール・報告書・チャット) | 高い。誤変換が1つあるだけで印象が悪くなる |
| AI(整理・要約・登録を任せる) | そこまで要らない。意味が通っていればよい |
「音声入力は誤変換するから使えない」は、前者しか考えていない見方です。後者の使い方を知ると、明日から使えるようになります。
崩れた話し方でもいい、という気楽さ
もうひとつ大きいのが、言い直しても、順番が前後しても、AIが整えてくれることです。
「えーと、あと、さっき言い忘れたけど」——こういう喋り方をそのまま渡して構いません。きれいに話そうとしなくていいので、考えながら喋れます。打っているときは思考が止まりますが、話しているときは止まりません。
★ただし、AIにも直せないものが2つある
ここを飛ばすと事故ります。正直に書きます。
① 固有名詞は、AIも直せません
お客様の名前、社名、社内でしか使わない略語、商品名。AIが知らない名前は、AIにも復元できません。「渡邊」が「渡辺」になっていても、AIには元がどちらか分かりません。
さらに悪いのは、AIが「それらしく直してしまう」ことです。知らない社名を、知っている似た名前に書き換えてしまう。そのまま議事録に残ると、あとで気づけません。
対策は音声入力の側で正しく文字にするしかありません。人名・社名を登録できる辞書の機能が要ります。
② 数字は絶対に化けさせてはいけません
金額、日付、件数、時間。ここが化けると、AIは疑いません。「600円」が「6,000円」になっていても、話の流れとしては成立してしまうので、そのまま精算に乗ります。
対策は2つです。
- 数字は口ではっきり区切って言う(「ろっぴゃくえん」より「600円」と数字を意識して)
- 出来上がったものの数字だけは、必ず目で見る。議事録の中身は流し読みでいいので、金額と日付だけは確認するのを習慣にしてください
何をAIに投げて、何を投げないか
| 向いている | 向いていない |
|---|---|
| 訪問の報告・議事録のもと | そのまま送るメール(人が読むので) |
| やることの洗い出し | 金額が主役の文章(見積・請求) |
| 思いついた企画・下書き | 正式な契約文・法務の文章 |
| 開発の指示(Claude Codeを音声で操作する) | 固有名詞だらけで辞書の準備がない状態 |
メールも「下書きをAIに作らせる」なら向いています。音声で要点だけ話して、AIに文章にしてもらい、最後に自分で読んで直す。この形なら誤変換は途中で消えます。
始め方(3ステップ)
- まず標準の音声入力で試す。MacもiPhoneも無料で使えます。設定はMacの音声入力を実用にする設定とiPhoneの音声入力を仕事で使うにまとめました
- 訪問の帰りに1回だけやってみる。完璧を狙わず、思い出した順に3分話すだけ。整えるのはAIの仕事です
- 固有名詞が化けて困ったら、そこで初めて道具を変える。ここが有料アプリを検討する分かれ目です
1と2は今日からできます。お金をかける前に、まず「AIに渡す材料を作る」という使い方に慣れてください。
固有名詞で困ったときの選択肢
お客様の名前が毎回化けるようになったら、辞書の機能があるアプリの出番です。
- 速さを最優先したい → 各社の料金はAqua Voiceの料金は結局いくら?とsuperwhisperの料金と日本語対応にまとめました
- お客様の名前や案件の話を外部のサーバーに出せない → ここが引っかかる方は多いはずです。訪問の報告には顧客名も、金額も、まだ公にしていない話がそのまま入ります。クラウド型の音声入力を使うと、それを音声としてよそへ送ることになります(クラウドに上げた音声はどこへ行くのか)
その場合は、ローカルで完結する音声入力アプリロカオンという選択肢があります(当社製品です)。この記事に書いた使い方をするために作りました。
- 音声も文字も端末の外に送りません。顧客名も金額も、どこにも出ません
- 人名・社名・略語を登録する「じぶん辞書」があります。AIに直せない部分を、入り口で押さえるための機能です
- 話し終わるとその場で文字が貼り付くので、車に乗る前の3分がそのまま使えます
年払いで年6,600円(月あたり550円・税込)です。1日10回まで(1回1分まで)なら無料で使え、最初の10日間は回数の制限もありません。macOS 26以降(Apple Silicon)のMacが必要で、Windowsには対応していません。ご購入後は、ライセンスの確認だけ1日1回・数十バイトの通信をします(音声や文字は送りません。つながらない日が続いても14日間は使え、過ぎても無料版として使えます)。
この記事の調べ方
- 訪問の帰りに音声で話しておく使い方、そこから議事録・タスク・精算の下ごしらえまでを自動で作る流れは、当社(合同会社ヒバナ)が日常業務で実際に行っているものです。特定の道具の性能を測定したものではありません。
- 「AIに渡すなら誤変換があっても意味が通じる」は、当社の実運用での実感です。この記事の企画自体、音声入力で届いた依頼文に複数の誤変換が含まれたまま、意図が正しく伝わりました。
- 「AIは知らない固有名詞を復元できない」「それらしく書き換えてしまうことがある」は、当社が実務で繰り返し経験した内容です。
- Macの標準の音声入力の仕様はMacユーザガイド、iPhoneはiPhoneユーザガイド(2026年8月17日確認)。
本メディア「ロカオン研究室」は、ローカルで完結する音声入力アプリ「ロカオン」を開発する合同会社ヒバナが運営しています。他社製品も、当社製品と同じ物差しで確認して書きます。記事中の他社製品の権利は各社に帰属します。

